SONY CF-5950 : Skysensor Cassette 5950

 CF-5950(以下"5950"と略)は、1976年に発売されたSW1, SW2, SW3, MW, FM受信可能な5バンド・モノラルラジオカセットコーダーです。5950の主な仕様は以下の通りです。

1.型式:SONY CF-5950 (愛称:スカイセンサー・カセット5950)
2.大きさ(概算):横432・高さ305・奥行148(単位:mm)、重量:5.6kg(電池含む)
3.電源:単1電池×4、AC 100V。
4.受信周波数:SW1:3.9〜10MHz、SW2:11.7〜20MHz、SW3:20〜28MHz、MW:530〜1605kHz、FM:76〜90MHz
5.受信回路:SW:ダブルスーパーヘテロダイン(1st:10.7MHz, 2nd:455kHz)、MW/FM:シングルスーパーヘテロダイン(MW:455kHz/FM:10.7MHz)
6.ダイヤル:フィルムダイヤル式、SWのみスプレッドダイヤル(-140〜+140kHz)あり
7.アンテナ:内蔵フェライトバーアンテナ(約16cm)、ロッドアンテナ、外部アンテナ/アース端子
8.カセット部:2トラック1チャンネル・モノラル、周波数範囲 50〜10,000Hz(Normal/Type I)

8.主な機能(チューナー部・共通部):10kHz直読スプレッドダイヤル(SW)、250kHzダブルビート・クリスタルマーカー
、4way大型メーター、BFO、AFC/AM SENS切替、ダイヤルライト(常時点灯可)、低音・高音独立音質調整
9.主な機能(カセット部):正立型カセットデッキ、ワンタッチ録音、キュー&レビュー、クレジット・イン、スリープ機能、オートシャットオフ、メカニカルポーズ、テープカウンター
10.外部端子:外部アンテナ/アース、MIC、REMOTE、LINE IN、MPX OUT、EARPHONE、HEADPHONE
11.定価:56,800円

 「空の探索者・スカイセンサーにカセットが付いた」「世界を狙い、世界を録るBCL・RX」というキャッチフレーズで発売されたのが5950でした。その名の通り、ICF-5900(スカイセンサー5900・以下5900)にカセットレコーダーを一体化させた、当時としては大型のラジオカセットです。
 当時、放送内容の録音できるテープレコーダーはBCLファンの最も欲しいアイテムでしたが、70年代半ばのテープレコーダーは安価な製品でも1万円以上の定価がついていたため、簡単には買えないものでした。それがBCLラジオで人気1,2を争う5900に付いたわけですから、当時のBCLファンには、カタログを見ながらため息をついていた人が多かったようです。
 しかしこの定価ですね。5900が27,800円に対して、5950はカセットが付いただけで2倍以上。当時のテープレコーダーに対する価値観が分からなければ、今だと到底考えられない価格設定です。未だに「ソニーのボッタクリ機種(笑)」と思っている人がいるくらいですから・・・

 ただ今になってこのモデルを見ると、さすがに5万以上の定価を付けただけあって外観も高級感があり、内部の部品や回路構成も豪華なものになっています。特にチューナー部(ラジオ部)は、5900と比べても「似て非なるもの」という感じで、改良によりトータル性能をさらに上げている感じです。
 ラジオの部分で、5900との相違点は以下の内容になります。

1. マーカー信号音で、ダブルビート方式を採用
 短波受信時の250kHzマーカー音で、各MHzの0/500kHzでは「ピロピロ」音、250/750kHzでは「プー」音と2段階に鳴る、ダブルビート方式を採用しています。5900はもちろん、ダブル・マーカー(500/125kHz)の松下・クーガ2200でもマーカー音は1種類ですから、凝っています。

2. BFO回路に「バランス型」を採用
 それまでのBFO搭載のBCLラジオではアンバランス型の検波回路を使っていましたが、5950はより性能の高いバランス型の検波回路を採用しています。通信型受信機やハム用トランシーバは多くがバランス型であり、5950のアナログBCLラジオとしてのSSB復調性能はトップクラスだったと思われます。

3. アンプ部の他、チューナー部にも専用のレギュレーター(定電圧)回路を搭載
 普通はラジオはもちろん、ラジカセでもレギュレーター回路はアンプ部の1個ですが、5950はチューナー部にも専用のレギュレーター回路を搭載しました。これで電源電圧や温度の変化にもチューナー部に安定した電源が供給できるため、受信周波数の変動等が少なく、長時間安定した受信が可能になっています。

4. 放送録音中、メモ代わりに自分の声や音を入れられる、クレジット・イン機能
 これは5950だからこそ可能な機能ですが、録音中にCREDIT INレバーを下げる事で、内蔵マイクや外部マイクから声や音で放送の情報などを録音する事が可能です。放送局名や時間などの情報を入れておけば、後で受信報告書や放送ライブラリを作る時に重宝する機能です。

5. 連続点灯可能なダイヤルライト
 それまでのBCLラジオは、レバーやボタンを押しているだけライトが点灯していましたが、5950ではライトボタンを押した後に右へボタンを回せば常時点灯が出来ました。左にボタンを回せば解除です。同様のライトロック機能は、ビクター・FR-6600が似たような機構を持っていたと記憶しています。

 その他、メーターやダイヤルの大型化、ピアノタッチのバンド切替スイッチ、イヤホン端子とは別に標準プラグのヘッドホンが直接接続できるHEADPHONE端子など、細かい所で改良やグレードアップが図られています。

 それに対してカセット部は正立型という特徴はありますが、ごく普通のカセット・メカです。キュー&レビューやワンタッチ録音は出来ますが、フルオートストップでなく録音・再生時のみのオートストップですし、当時の普及型〜中級クラスのメカニズムです。それでも、BCLラジオにカセットを搭載する事自体に大きな意味があった時代ですから、カセット部は基本機能・性能のみで十分だとメーカーは考えたのかもしれません。

 この機種については、しばらく続きそうな感じなので、いったん中休みです。


CF-5950・修理改良記(1)

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