SHARP CS-6302 : Compet 6302

 SHARP CS-6302(以下"6302"と略)は、1980年代前半?に発売されたVFD(蛍光表示管)表示の16桁・加算器方式電卓です。6302の主な仕様は、以下の通りです。

 1.型式:SHARP CS-6302 (愛称:COMPET 6302)
 2.大きさ:幅249・奥行210・高さ58(単位:mm)、重量:不明
 3.電源:AC 100V 50/60Hz・メモリバックアップ用に単二電池×4 消費電力:3.4W
 4.桁数:置数16桁・加減乗除16桁・アイテムカウント3桁
 5.表示素子・状態表示:VFD(蛍光表示管) ・ 負数(-)、エラー時"E"、オーバーフロー時"←"など15種類

 6.搭載メモリー:2+3本(独立累計2、ストレージ・コンピュータ機能使用で最大3)
 7.小数点方式:浮動(F)、切捨て(CUT)、切上げ(UP)、四捨五入(5/4)
 8.丸め計算:小数点以下第0,1,2,3,4,5,6,8位と、ADD2モード(合計9段階)
 9.定数計算:加減乗除、「K」スイッチON時に対応
10.主な計算機能:四則計算、各種定数計算、合計計算、割増割引計算、多集計計算、アイテムカウント(最大999個)、百分率(%)、平均(AVG)、売価・原価計算(MU)、サインチェンジ(+/-)、平方根など

11.特殊計算機能:ストレージ・コンピュータ機能(最大3本まで)
12.標準小売価格(
当時): 不明(5万円台?)

※製品の概要

 製品的には、同社の16桁電卓・CS-6301/6301Aの後継機となります。キー配置やスイッチ類は6301Aから受け継いでいます。
 6302は16桁機でもあり、発売当時はシャープ実務電卓のトップに君臨していたと思われます。そのためか、機能も本格実務電卓に必要なものは全て持った上に、9段階の小数点丸めスイッチやストレージ・コンピュータ機能など、ちょっと過剰?と思えるほどの充実ぶりになっています。
 また後述しますが、ディスプレイは青と赤で表示するマルチ・カラータイプのVFDを採用しています。電卓で2色VFDを見たのは初めてでした。

 また6302は単2電池を4本使用しますが、電池駆動は出来ずAC専用機となります。この電池は、内部メモリーやストレージ・コンピュータのデータ・バックアップ専用です。逆に言えば電池を入れなくてもAC電源さえあれば、通常通りに使用できます。
 なお電池が入っていないか容量切れの場合は、ディスプレイ右上に赤色で「V」と点灯します。
 
※ディスプレイについて

 6302の大きな特徴の一つは、ディスプレイ表示にあります。
 まず画像のディスプレイ部分は、固定ではありません。6段階のチルト・ディスプレイになっており、寝かせた状態からほぼ直立した状態まで、見やすい角度に調整できます。またディスプレイ自体も凝っており、数値とメモリー表示以外の状態・内容表示が赤色で表示されます。いわゆる「2色VFD表示」になっており、通常の本格実務電卓とは異なった雰囲気です。
 状態・内容表示については本体左上にシールが貼ってあり、以下の内容になっています。なお「表示シンボルの内容」は、ディスプレイ上部・数値表示の上に表示されます。


表示シンボルの内容等が書かれたシール

※キーについて

 キーの感触は非常に良いです。下手なパソコン用キーボードよりも快適に操作できます。若干浅めのキータッチで、おそらくキー音が少なめのスイッチを使っていると思われます。
 ホームポジション([4],[5],[6])のキーは他のキーと比べて深さがあり、ブラインドタッチ時に容易にホームポジションが分かるようになっています。

 数値や演算命令などを入力するキーや配置は、シャープの本格実務電卓の基本的なものを踏襲しています。上下の矢印キーは、カシオで言う[x←→y]キーで、レジスタの入れ替えを行うためのキー。定数計算で定数を入れ替える場合などに使います。
 [IC]キーもカシオやキヤノンの[ITEM][ITEM R/C]と同じで、アイテムカウント・スイッチがONの時に、入力された個数を表示/クリアします。なおここで紹介している「KS-Smart」と同じように、[-=]を押した時カウントを-1するモードも搭載しています。

 数値入力キーは、一番下・2段目・3段目・4段目と微妙にキー形状を変えてあります。また[+=]・[-=]キーは大型でかつ左下がりに傾斜をつけており、左手打ちの親指入力・右手打ちの小指入力にも問題ないようになっています。[+=]キーは、6301Aまでは縦に通常キーの2列分の大きさでしたが6302では3列分を取っており、巨大なキーになっています。また[×]キーも縦に2列分と大きめです。

 [000]キーを付けた関係で[0]キーが[1]の左下になっていますが、[0]の上が空きになっているので左手打ちやブラインドタッチでも[C]キー等と打ち間違える事はありません。立派な本格実務電卓です。
 なお[√]キーは付いていませんが、数値を入れて[÷][+=]と操作すると、平方根(√)が求められます。[÷][-=]で平行根の負数です。
 これはシャープの最上位機種レベルでの実務電卓に付いている場合が多く、現行機ではプリンタ付の最上位機種「CS-2850A」が、同様の操作で平方根が求められます。

※メモリーについて

 このモデルの特徴は、メモリー機能の充実ぶりです。独立メモリーが2本用意されている他に、後で説明する「ストレージ・コンピュータ」機能を使えば、最大3個・合計5個の定数を別にメモリとして持つ事が出来ます。これらのメモリーはバックアップ用電池を入れておけば、電源を切ってもデータ内容が消える事はありません。
 もちろん、定数計算の「K」に丸めの「切捨て・切上げ・四捨五入」のスイッチは装備。小数点以下は第0位〜第6位まで連続で設定でき、さらに第8位とADD2モードまで計9段階の設定が可能です。

 また通常計算モードに加え「Σ1」「Σ1・FΣ2」の2つのモードがスイッチで設定できます。
 「Σ1」モードは独立メモリー左側(灰色のキー・以降「M1」)に、[+=]・{-=]を押すたびに数値が加減算されて入ります。総合計の計算結果が入るので、今の電卓でいう「GTメモリー」に相当します。
 「Σ1・FΣ2」モードは、M1メモリーには「Σ1」モードと同様に総合計が入りますが、独立メモリー右側(黒色のキー・以降「M2」)に「最初に入力した数」が加減算されて入ります。例えば「1,000 [×] 5 [+=]」と操作すれば、最初の「1,000」がM2メモリーに加算されます。
 総合計と売上単価合計が同時に求められる、といった感じでしょうか。

※ストレージ・コンピュータ機能について

 6302は、最大3本(SC1・SC2・SC3)のストレージ・コンピュータ機能を持っています。簡単な数式を入力して記憶させれば、後は簡単な操作で計算が出来るという代物です。これもバックアップ用電池が入っていれば、電源を切っても内容は消えません。
 ただコンピュータ機能と言っても、プログラム関数電卓などのように数十〜数千ステップのプログラムは扱えません。表示されている値に何かの値を加減乗除するなど「1ステップの処理」だけが可能です。プログラムと言うより、定数計算を簡単にするといった感じです。

 登録方法は[C]キーを押した後に、数値と演算(機能)キーの組合せで入力します。例えば「消費税込み」の金額を求めるようにするには、[×]・「1.05」と入力して、最後に1番のストレージ・コンピュータに登録するには、[STR][SC1]と押します。SC1キーは[CU]キーに割り振られています。[SC1]の所を[SC2][SC3]にする事で、最大3個までの登録が可能です。
 数式を消去するには、[C]キーを押した後に[STR][SC1]などと押せば、該当番号(SC1〜SC3)の登録した内容をクリアできます。
 使用する場合は、数値を入力後に[COM][SC1]と押せば、上記の例では消費税込みの金額が表示されます。

 また、ただ「1,000」などと数値だけを入れておけば、定数メモリーとしても使用できます。登録・使用方法は上記と同じです。

※まとめ

 シャープの誇る「本格完全実務電卓」と言っていいでしょう。実務電卓として必要な機能は、平方根まで含めて全て付いています。キータッチも良く表示もきれい。欠点の特に見当たらない製品です。25年以上経過した今でも部品の劣化を感じませんし、十分すぎるほど実用として使えます。
 コンペットの伝統を正当に受け継ぐ、超・本格派という所でしょうか。使っていて楽しくなる電卓です。

 唯一残念なのは、これは当時のシャープ製電卓全般に言えるのですが、ホワイト系のボディーが経年変化で黄ばみやすいという事でしょうか。カシオの高級実務電卓では、こういった黄ばみは比較的少ないように思います。
 それを差し引いても、かなり気合を入れた逸品なのは言うまでもない所です。


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