Canon KS-Smart

 Canon KS-Smart(以下"KS-Smart"と略)は、2007年7月に発売されたLCD(液晶)表示の12桁・実務電卓です。KS-Smartの主な仕様は、以下の通りです。業界初の「加算器式・算式通り式の切替」が可能な電卓として販売されています。

 1.型式:Canon KS-Smart
 2.大きさ:幅105・奥行170・高さ18(単位:mm)、重量:155g
 3.電源:太陽電池・CR2032×1
 4.桁数:置数12桁・加減乗除結果12桁・13桁以上概算表示
 5.表示素子/状態表示:LCD(低反射・高コントラスト型液晶) /独立メモリー使用時"M"、エラー時"E"、定数計算(加算器モードのみ)"K"、アイテムカウント(最大999)、GT、+(±)件数、税抜、税込、税率設定、+,−,×,÷,=の計算状態表示

 6.搭載メモリー:独立累計メモリー、GTメモリー
 7.定数計算:加算器式はスイッチ切り替え(K)・乗除のみ、算式通り方式は四則演算で可能
 8.主な計算機能:四則計算、各種定数計算、合計計算、百分率(%)、表示数値シフト([→])、税額計算、検算&修正機能(算式通りモードのみ)など
 9.丸め機能:切捨て・切上げ・四捨五入搭載、小数点以下桁数は0, 1, 2, 3, 4, 5, Add2(+)の7段階

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.標準小売価格: 8,500円(税抜)

メーカーの商品紹介ページ

マニュアル(PDF)

※2つの顔を持つ、スマート・デザインな本格実務電卓

 本HPの趣旨とは合わない「光らない電卓」ですが、加算器方式が使えるユニークなモデルという事で今回特に掲載しました。
 加算器式の使える電卓としては、国内製品では最小・最軽量。定価も加算器方式搭載品としては、最もリースナブルな電卓の一つです。
 発売してまもなく3年と、電卓の1モデルとしては比較的長く販売しています。


画像1:本体裏面の切替スイッチ

 このモデル最大の特徴は画像1のように、普通の「算式通り方式」と「加算器方式」を切り替えて使えるという「二つの顔を持つ」点にあります。
 なおかつ実務電卓としての表示・キー配置・キータッチや機能を満たした上で、高級感やデザインにも気を配った「デザイン電卓」としての顔も持っている、ちょっと欲張りなモデルです。
 そして経理・財務のプロ仕様という事を強調するためか、本体側面には画像2のように「PROFESSIONAL CALCULATOR」の文字があります。


画像2:本体左側面の表示


※製品の概要

 カシオやシャープの「本格実務電卓」「経理仕様電卓」よりは、少し小ぶり。A4用紙の約1/3といった感じの大きさです。筐体は黒をベースに白のキートップ文字、銀色の枠や銘板と非常にシックな感じ。安っぽさはありません。
 画像3は、ここで紹介した801-MR、KS-Smart、シャープの経理仕様電卓EL-N922とを並べて大きさを比較したものです。


画像3:CASIO 801-MR/Canon KS-Smart/SHARP EL-N922

 "Smart"と型番にある通り、厚さは最大で18mm。一番薄い所は10mmを切るので大きさに比較して薄く見えます。カバンに入れてもかさばる事は無いでしょう。
 デザインは直線を主体としてシンプルさを強調したもの。また本体正面のCanonの社名は印刷ではなく、銘板にエンボス加工されています。
 本体表面や裏面を黒の皮革調に仕上げてあり、手触りもプラスチッキーな感じではありません。特に表側のボディー仕上げは凝っています。

 裏は画像4のように、CR2032電池を入れる蓋と、加算器方式/算式通り方式のモードを切り替えるスライドスイッチがあります。動作中の切替も出来ますが、スイッチを切替えると結果表示が「0」になり、税率設定以外のメモリー内容も消えてしまうので注意が必要です。
 画像4の左右には、滑り止め用の大型ラバーが付いています。一見スタンドにも見えますが、立ったりはしません。この大型ラバーのおかげで、かなり強い力でキーを叩いても、計算機本体が動いたりする事はありません。


画像4:本体の裏面。左右に大型ラバー、中央右に電池蓋と切替スイッチがある


※キータッチとキー配置

 本体を薄型に作ってあるため、さすがにKS-Smartのキータッチは浅いです。ですがしっかりとしたクリック感を持っており、グラグラした感じも無いので使用感覚は快適です。本体右側のキー([+][−]など)は他のキーより6%ほどタッチを軽くしてあるそうですが、あまり感覚の違いはありませんでした。むしろ[ON/CA]キーが誤作動しないように少し重めになっており、この点は好感が持てます。
 もちろんサイレント・キーでキー・バッファ用メモリも搭載しているため、静かなキー音&高速でのキー入力にもきちんと対応しています。


画像5:キー配置・液晶表示など

 キー配置は「新・カシオ配置」に酷似しています。[0]がクリアキーの下に潜り込み、[00]が[1]の下、小数点が[2]の下に来るタイプ。カシオが数年前から積極的に採用しているキー配置です。
 この配置は「右手で計算機を扱う」事を優先的に考えたものです。そのため左手で扱う場合、左下がクリア[C]でなく[0]だったり、[0]のすぐ上に[C]や[AC]があったりと、非常に扱いにくくなっています。

左下にクリア・キー、[1]の下は[0]、[2]の下に[00]か[000]、[3]の下に小数点キーを置く

というのが、経理・財務のプロが使う「左手操作対応」のキー配置。これを守っているのが「本格実務電卓」です。
 [00]と[000]キーを両方持った機種には[0]が[1]の左下というのがありますが、この場合は「[0]は通常キーの2倍以上横長」「[0]キーの直上に他のキーが無い」という原則を守っています。これも本格実務電卓でしょう。

 KS-Smartの場合、機能は十分なのですがキー配置が本格実務電卓のそれではないので、残念ながら「本格」を外した「実務電卓」の一モデルと考えるべきでしょう。Professional Calculatorを名乗るなら、左手操作に対応した本格実務電卓のキー配置でないといけません。

※表示について

 LCDは12桁で、表示文字も大きく非常に見やすいものです。表示ガラス面に低反射処理を施してライトの映り込み等を無くしており、さらに高コントラストの液晶を使っているためです。
 明るくても多少暗くても判別は易しいので、好感の持てるディスプレイです。

 上部の状態表示も、アイテムカウントのカウント数以外は良好に読み取れます。カウント数は999までですが、さすがに表示は小さくなってしまったかな?でも全然読み取れないといった小ささではありません。
 なおこのアイテムカウントは加算式モードのみです。算式通りモードでは最大100ステップの「計算ステップ・カウント」になり、[▲], [▼]キーで過去の計算過程を呼び出せます(リプレイ機能)。そこで数値の間違いが見つかって修正する時に[修正]キーで修正します。

※加算器式モードについて

 本体裏のスイッチで「加算式・件数+」か「加算式・件数±」にすると、加算器式モードになります。同時にキーの一部機能が、以下のように変更になります(キー右下の表示機能になる)。

 [.]→[000]、[=]→[.]、[+]→[+=]、[−]→[-=]、[▲]→[K]

 件数+と件数±の違いは[-=]キーを押した時にあります。件数+では「アイテムカウントが+1」ですが、件数±では「アイテムカウントが−1」となります。件数+が伝統的な加算器式のアイテムカウントで、±は既に入れてしまった数値を訂正して、カウントも減らしたい時に使います。

 また加算器式ではクリア後に[1][+=][+=][+=]・・・と続けて押せば、表示も「2, 3, 4..」.と数値が加算されていきますが、KS-Smartでは「1.」のままです。同じ事をするには[1][+=][1][+=][1][+=」・・・と、必ず数値を入れた上で[+=]か[-=]を押す必要があります。
 または[K]キーを押して表示に「K」シンボルを点灯させ、その上で[1][+=][+=][+=]・・・とやれば、「2, 3, 4..」.と数値が加算されていきます。定数計算モードにして使う訳です。

※演算機能について

 四則以外の計算機能は%・定数計算(K)・税抜/税込・GTメモリーを搭載しています。なお算式通りモードでは、定数機能はシャープと同じく自動定数計算になります。
 KS-Smartは、通常の経理・財務計算で多く使いそうなキーに特化して搭載しているので、[√]や[+/-]といったキーが搭載されていません。平方根計算が必要な、日商簿記1級の試験には向いていないかもしれません(2級以下は大丈夫)。
 もし後継機(KS-Smart 2)が出るなら、この2個のキーは搭載してもいいのではないでしょうか。あと[税抜]・[税込]キーより[MU]キー(マークアップ:売価や原価率計算に使う)」だと良いですね。[MU]なら[税抜]・[税込]を含めて色々計算出来るので。

 あとKS-Smartを使っていて最も不満なのが、約7分間使用しないとオートパワーオフ機能で電源が切れるのですが、電源ON時に「独立メモリー・GTメモリー・計算過程の記録が全部クリアされてしまう」事。せめて独立メモリーの値は、電源が切れても保持してほしいと思います。
 バックアップ用にリチウム電池(CR2032)を使っているのだから、メモリーの保持は可能なはずなのですが。

※まとめ

 まず小型軽量の加算器式が使える電卓を求めるなら、現在はKS-Smartしかありません。他の加算器式電卓は全てセミ・デスクトップ以上の大型サイズになるからです。私も最近持ち運んでいる電卓は、コレです。
 またデザインや本体の造り、リプレイ機能に価値を感じる方にもおススメです。
 通常のデザイン電卓とは異なり、プロ仕様と謳う分酷使にも耐えられる工夫がされているので、簡単に壊れず永く使える電卓だと思います。

 不満は本当にキー配置のみです。先に述べた本格実務電卓のキー配置で[√]・[+/-]キー追加され、電源が切れてもメモリーが保持される「KS-Smart 2」が出たら、私は衝動買いします(笑)。

ついに出ました、KS-Smart Lite!√も+/-キーもあります!でも加算器式じゃない。

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