加算器方式電卓って何?

 まず、下の画像を見てください。左が加算器方式の電卓(CASIO F-1)、右が通常入力方式の電卓(CASIO fx-101)です。
 注目は右下の四則演算キーです。

 加算器方式の場合、通常の[+]キーが[+=]キーになっています。また上記のF-1で[−]キーがありますが、これを[−=]キーと表示してある加算器方式電卓もあります。
 そして加算器方式には[=]キーがありません(古い電卓では、[+=]を白文字で[=]、[−=]を赤文字で[]と表示してある物もあります)。[+=]と[−=]キーが[=]キーの働きも兼ねているのです。
 つまり通常の電卓と加算器方式電卓との大きな違いは、

1.[+]は[+=]キー、「−」は[−=]キーとなる
2.[=]キーが存在しない([+=], [-=]を使う)

 という事になります。それ以外の機能(乗除算、%、√、メモリー等)を使う時は、普通の電卓と操作方法は同じです。
 なおカシオやシャープ、キヤノンなど主な電卓メーカーのカタログでは、加算器方式の電卓に「加算器」または「加算器方式」の表示があります。

1.なぜ加算器方式が存在するの?

 日本の電卓は最初から「加算器方式」がほとんどだったのです。電卓はまず、企業の経理部門など事務計算のプロ達に使われていきましたが、彼らが仕事をこなしていく上で都合のよい入力方式が加算器式だった、という事です。加算器式は電卓誕生以降10年以上、入力方式の主流であり続けました。
 現在のような[=]キーを使った入力方式が主流になるのは、有名な「カシオ・ミニ」(1973年)以降、電卓が個人のツールになってからの事です。しかし各種の集計計算において通常方式よりも優れているため、現在も加算器方式電卓を使っている企業や個人があります。
 特に「プリンタ付き電卓」の分野では、今も加算器方式が主流です。

2.加算器方式を使うメリットは?

 加算器方式は、多数の計算アイテム(伝票など)をまとめて計算する「集計計算」で最も威力を発揮します。
 こういった計算は普通に加算・減算の繰り返しですが、加算器方式は「置数→[+=]・[-=]の繰り返し」だけで加算・減算が直感的に、速く出来るように作られています。そのため[+=]・[-=]キーは大型のキーか、周囲にキーの無い押しやすい場所に配置してあります。

 また丸め計算(四捨五入して小数点第2位まで、など)を有効にしている時、加算器方式では[+=]・[-=]キーを押すたびに結果が丸められて表示されます。乗算・除算の結果も最後に[+=]を押しますから、すぐに丸められて出てきます。
 対して通常方式では、[=]キーを押すまで表示での丸めは出来ません。

 また加算器方式電卓の特徴として「左手で扱い易いように作られてた物が多い」というのがあります。経理や財務のプロは、右手に書く物を持って左手で電卓を扱う事が多いのですが、加算器方式のキー配置はそれを考慮して作られています。
 例えば[+=]・[-=]キーが大きく、少し左下がりの傾斜をつけたりしているのは、左手の親指で扱いやすくしているため。また左側の[C](置数訂正キー)などは左手だと小指で押す事も多いですが、扱いずらい小指でも簡単に押せるようにキーを大きく取ったり、周囲に他のキーが無いように配置を工夫しています。

3.加算器方式電卓の使用上の注意(減算時)

 加算器方式とはいえ、計算は通常方式の入力とほとんど変わりません。ほとんどの計算で[=]を最後に押す代わりに[+=]を押せば、答えは正しく出ます。
 注意が必要なのは「最初から減算を行う場合」です。例えば「9−7」といった場合です。
 通常方式なら「[AC] 9 [−] 7 [=]」で、答えの「2」が出ます。ところが加算器方式で「[AC] 9 [-=] 7 [+=]」と押すと、答えは「−2」となってしまいます。
 これは加算器方式の[-=], [+=]キーが、「現在表示されている数から、引く(足す)」という仕様になっているためです。[AC]キーを押す事で電卓の表示は「0」になっていたはずですから、加算器方式では「9 [-=]」の所が「0(表示数) − 9」という計算になります。当然答えは「−9」と表示。
 それに「7 [+=]」で7が加算されますから「−9 + 7」という計算になり、答えが「−2」と表示されるわけです。
 「あくまで現在の表示に対して加算・減算する。それが加算器方式」と思ってください。

 ですから表示が「0」の状態で「9−7」を加算器方式で計算する場合は「(0に) 9を加え、7を引く」という考え方で、その通りにキー操作をします。そのためキー操作は[AC]キーを押した後に、

「9 [+=] 7 [-=]」 (9を 加える、7を 引く) 

と操作すれば、正しい「2」という答えが出ます。
 通常入力に慣れた人には一見とっつきにくい所ですが「現在表示に対して、数字の後に加えるor引く」だけなので、加減算の操作自体は非常に単純です。この単純な操作体系が大量の加減算処理にはうってつけで、加算器方式が集計計算で最も威力を発揮する理由でもあります。
 回路的にも加減算部分が単純化できますので、初期の電卓が加算器方式ばかりだった一つの理由ではないかと思います。

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