Canon L1217 : Canola L1217

 Canon L1217(以下"L1217"と略)は、1976年11月に発売されたVFD(蛍光表示管)表示の12桁・加算器方式電卓です。L1217の主な仕様は、以下の通りです。

 1.型式:Canon L1217 (愛称:Canola L1217)
 2.大きさ:幅235・奥行255・高さ80(単位:mm)、重量:1.7kg
 3.電源:AC 100V 50/60Hz 消費電力:5W
 4.桁数:置数12桁・加減乗除12桁・平方根結果12桁・アイテムカウント3桁
 5.表示素子・状態表示:VFD(蛍光表示管) ・ 負数(-)、エラー時"←"表示、メモリー使用時"M"表示、アイテムカウントON時に赤色LED点灯

 6.搭載メモリー:1本(独立累計)
 7.小数点方式:浮動(F)、切捨て、切上げ、四捨五入(5/4)
 8.丸め計算:小数点以下第0, 2, 4, 6位と、ADD2モード(合計5段階)
 9.定数計算:乗除のみ(加算器方式のため)
10.主な計算機能:四則計算、定数計算(「K」スイッチON)、合計計算(「AM」スイッチON)、売価計算([MU]キー)、アイテムカウント(最大999個まで)、百分率(%±)、平方根(√)、置数交換([RV]キー)

11.標準小売価格(当時): 不明

※型番について

 Canola(キャノーラ)は、キヤノンが最初の電卓「Canola 130」以降、本格実務電卓に付けている愛称です。シャープの「COMPET(コンペット)」に相当する愛称です。
 また同社はVFD/ニキシー管など「光る表示」の12桁・実務電卓について、一貫して「L12**」の型番を付けています。「**」は飛ばし番号もありますが、大体発売順に番号が付いています。現行機種でも「L1255」という加算器式電卓がある、息の長いシリーズです。

※製品の概要

 製品的には、1973〜74年発売の12桁電卓「Canola L1210(L1211,L1212)」をベースとした、マイナーチェンジ・モデルと言えます。
 またキヤノンは同時期に「Canola L1214」という、バッテリー駆動の12桁・VFD表示・加算器式電卓を発売しています。L1214はL1217キー配置・機能が全くと言っていいほど同じ事から、双子の機種とも言えます。
 L1217とL1214の違いは、L1217がAC100V専用・L1214がAC/電池の2電源方式となります。またキーやスイッチについて、L1217は本格実務電卓のそれで耐久性の高い部品を使っていますが、L1214はコストダウンのためかキーは浅いタッチで文字も印刷仕様。スイッチも小型のスライドスイッチを使っています。またL1217は切捨て・切上げ・四捨五入と3種の丸めが出来ますが、L1214は切上げが無く、切捨て・四捨五入の2種となります。

 大きさ的には162-Fの奥行きを少し詰めた感じ。上から見るとほぼ正方形に見えます。ただ重量は1.7kgと162-Fより200g強ほど重くなっており、消費電力も162-Fより1W大きくなっています。重さは画像1のように表示部の周囲へ金属シールドを施してある点、消費電力は162-Fより大型のVFDを使っている事があるのかな?と思います。


画像1:表示部の金属シールド(中央ダークグレー部)

※12桁表示部

 表示は、かなり大型の12桁VFD表示管が使われています。162-Fや801-MRは丸いガラスチューブの中に表示器が入っていましたが、L1217は「平型多桁管」という平らな表示管を使っています。3桁ごとの位取り表示は、数字の右上にある一般的なもの。数字も含めて視認性は極めて良好です。
 一番左の表示は「M」「−」「←」の3種類。Mはメモリーに値が入っている時、−(マイナス)は負数時に、←はオーバーフロー(エラー)時に点灯します。また表示の右下には赤色の発光ダイオード(LED)があり、アイテムカウント(ITEM)スイッチをONにすると、タイトル画像のように赤く点灯します。

※キータッチについて

 キーの感触は良好。ストロークも適度な深さで、クリック感もしっかり持っています。長時間の使用でも指が痛くなる事は無いでしょう。キー音も比較的静かな方です。
 キートップは印刷ではなく2色成型プラスチックなので、簡単に消える事はありません。

 キー配置も[0]キーを[1]の下に置いた上で2倍の幅にし、離して[C]、[CI]キーを置いているという立派な「本格実務電卓」仕様です。なお[C]キーは、カシオでは[AC]に相当し(シャープは同じ)、[CI]はカシオの[C]、シャープの[CE]に相当します。
 またキヤノンの特徴として「本格実務電卓に[RV]キーの搭載率が高い」というのがあります。カシオだと[x←→y]・[x/y]キーに相当します。
 定数計算(「K」スイッチON)中に、乗数と被乗数・除数と被除数との値を入れ替えたりする場合などに使用します。


画像2:キーボード左半分。大きい0キー、RVキーなどが見える

 丸め桁数は、小数点以下0, 2, 4, 6桁と2桁おきです。画像2の左上のスイッチですが「+」と表示があるのはカシオで言う「ADD2」で、自動的に小数点以下2桁の数値を入力する時に便利なモードです。

 キーボードの右半分では、横に大きく分かれた[+=]・[-= ]キーが目を引きます。この並びはキヤノン初の電卓「Canola130」から伝統的にこの配置。カシオも当初は横並びで、[+=]・[-=]の縦並びはシャープが代表でした。
 最近はキヤノンも含めてほとんど縦並びになってしまったので、懐かしい配置です。
 [MU]は、売価計算専用です。原価、[×]、利益率(%)、[MU]と操作すれば、利益率に相当する利益+原価の入った売価を求める事が出来ます。

 メモリー関連のキーは右側に固まっています。クリアと呼び出しはシャープと同じで、それぞれ[CM]、[RM]となります。[C]・[CI]もそうですが、この頃のキヤノン実務電卓では、クリア関連のキーを黄色に統一しています。
 2つの[M=]は、[+=]と[-=]の文字の色に対応しています。白の[M=]は[M+]、黄色の[M=]が[M-]に相当します。
 また上部のスイッチで「AM」というのがあります。これをONにすると、[+=]・[-=]を押すたびに計算結果がメモリーに加算・減算されます。複数の集計計算を行った後、総合計を求める場合([RM]を押す)に有効。今で言う「[GT]メモリー」に相当する機能です。
 [R/C ITEM]キーは、アイテムカウントON(画像3の「ITEM」スイッチを右へ)にした時、1回押すと現在のアイテム数、もう一度押すとアイテムカウントがクリアされます。


画像3:キーボード右半分。MU、二つのM=キー、AMスイッチなど


※演算機能について

 本格実務電卓としての計算機能は全て持っています。アイテムカウントも最大999までと十分。今の本格実務電卓が持っていてL1217が持っていないのは、サインチェンジ(+/-)くらいでしょう。あと[MU]キーは売価計算専用で、原価率計算(MD)の機能は持っていません。
 なお加算式で[C]、[1]、[+=]、[+=]・・・と続けていくと、表示が「1, 2, 3...」と定数計算のように加算される電卓がありますが、L1217は「1.」表示のまま動きません。KS-Smartも同様なので、キヤノンは伝統的に「何か値を入れないと[+=]・[-=]が有効にならない仕様」なのかもしれません。

 演算速度は高速。割り算や平方根など、当時ともすれば時間のかかる計算でも一瞬で答えが出ます。801-MRとそんなに発売時期は違わないのですが、LSI技術の急速な進歩を感じます。

※まとめ

 発売後30年以上経過したモデルですが、現在でも普通に使える本格実務電卓です。早打ちに対する応答もなかなか速いですし、財務・経理のプロ用としても十分なスペックを持っています。VFD表示も今の実務電卓に多い「とても縦長・細い」ものとは違い、各桁の横幅をとった非常に見やすいものです。私自身も自宅で計算用に使っておりますが、この表示とキータッチは気に入っています。

 この電卓は表示部の金属シールドもそうですが、内部はきちんとお金をかけた造りになっています。また銘板も正面右の他に背面にもあり、両方とも印刷ではなくエンボス加工されています。手で触ると文字が浮き上がっているのが分かります。


画像4:本体背面の銘板

海外のサイトでは「Canola・ヴィンテージモデル」の最後に紹介される事もあり、Canola130以降の流れを受け継いで造られた最後期の一台、と言えるかも知れません。

L1217の内部について


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