RF-1010・改良の記録
これはRF-1010について、個人で行った改良作業の記録です。
なお結果については成功しましたが、他の1010について同様の結果を保証するものではありません。くれぐれも自己責任で行ってください。
故障などが発生した場合の責任は取れませんので、よろしくお願いします。
1.改良目的
(1)
受信感度(特にAM部)の上昇
FMの感度は良いですが、AMはもう少し感度を上げられるように感じていました。
(2) 音質のアップ
1010は元々音質の良いラジオですが、最新の部品を使う事でさらに音質アップを図ろうとするものです。
(3) BFOの発振レベルを上げる(多少弱め)
クーガ・シリーズ全体の欠点?とも言えるのですが、BFOをONにした時の発振が弱めで、SSBの受信がなかなかうまくいかない時があります。少しは受信を改良したいと考えていました。
そして1010を「シングルスーパー最強のBCLラジオ」にする!・・・というのは冗談ですが(笑)。
2.実際の作業
(1)
受信感度の上昇
・AM部のFET(高周波増幅)、中間周波数増幅用トランジスタ、FM部の高周波・中間周波増幅用トランジスタの交換
・検波用ダイオードの交換
・電解コンデンサの交換(高周波部・中間周波増幅部)
(2)
音質のアップ
・低周波増幅部と電力増幅部のトランジスタ交換
・電解コンデンサの交換(低周波増幅部、オーディオ用コンデンサを使用)
(3)
BFO関連
・発振用トランジスタの交換
これらの作業終了後、トラッキング調整とBFOの調整、メーター調整を実施します。
3.受信感度上昇編
(1)-a
AM部のFET交換
1010はRF(高周波)のフロントエンドに、FETの2SK49-F(NEC)を使っています。ただしMW/SWのみで、FMのRF増幅には2SA838(松下)を使っています。
この2SK49に替えて、今回は2SK192A-GR(東芝)を使ってみました。同時にドレインに直結された抵抗も、39kΩ→22kΩ(1/4W)に変更します。
古い受信機でのFET変更には2SK241もよく使われますが、今回はAM部にのみ使われているため、192Aで十分感度は上がると思われます。低雑音(NF=2SK49の半分)なのも良いですね。
(1)-b
中間周波増幅(IF)用トランジスタの交換
AM部のIF増幅には、2SC1359(松下)が1個使われています。高周波用のトランジスタでfT(トランジション周波数)=250MHzという製品です。
今回は2SC1923(東芝)に変更してみます。最大コレクタ損失が100mWと少なめですが、BCLラジオのRF/IF部の増幅には十分でしょう。fTは550MHzと高めで、低雑音です。
このトランジスタは、ラジオならAM/FMのRF段〜ミキサ〜IF段まで幅広く利用できます。2SC710(三菱)や2SC829(松下)の代替としても使えると思います。
※追記:うまくいったように思えましたが、使用してテストしているうちに不具合が見られたので、2SC1359-C(未使用品)に戻しています。
(1)-c
FM部のトランジスタ交換
1010のFM部は、RF/IF部に2SA838(松下)を3個使っています。高周波用でfT=300MHzです。
少し脚が黒くなっている事もあり、地元のパーツショップにあった2SA1323-C(松下)に交換します。これは型番は違いますが、コレクタ損失が300mWである事以外は2SA838と全く同じ特性のトランジスタです。
小型化する事で、高密度実装に対応したトランジスタのようです。
(2)
検波用ダイオードの交換
1010では検波用にゲルマニウムダイオードの0A90(1N60と同等品)が使われており、FM用2本・AM用1本で計3本です。他に0A90は、AM整流用に2本・FMのAGC用に1本使われています。
ここは、普通のシリコンダイオードやショットキバリアダイオード(SBD)を使ってしまうと、VFが0.6V〜と高いために検波出力が著しく低下する結果、感度が大きく下がります。1N60などのゲルマニウムダイオードを使うか、VFが0.2〜0.3Vの低電圧で動作するダイオードが必要となります。
今回は秋月電子通商で販売されている「BAT43」というSBDを使いました。下の画像で「ゲルマニウムダイオード代替用」とある通り、VFが0.26〜0.33Vと低く十分に0A90の代用となります。
またスイッチング特性が優秀なので、一般的なゲルマニウムダイオードより検波出力の増加(感度アップ)が期待出来ます。なおFM
AGC用は1N60に交換します。
(3) 電解コンデンサの交換
高周波部・中間周波部・検波部の電解コンデンサは、日本ケミコンの標準品(SMGまたはKMG)に変更します。SMGとKMGの違いは85℃品か105℃品かの違いだけで、特性は一緒です。
耐圧は、10μF以下は50V、10μFを超える部分については16Vあれば十分です。
4.音質アップ編
(1)
低周波増幅&電力増幅トランジスタの交換
1010の低周波増幅は2段で、最初が2SC945(NEC)、2段目に2SB173(松下)が使われています。
このうち2SB173は互換品も含めて入手困難であり、現状で十分な性能を出しているため替えずにいきます。2SC945については、2SC1815のローノイズタイプに変更します。グレードはYかGRですが、テストの結果Yが良好だったのでYにしました。
電力増幅部の2SC1568(松下)については、型番を変えずに2本とも未使用品に交換します。
(2)
電解コンデンサの交換
低周波部と電力増幅部の電解コンデンサは、全てオーディオ用に変更します。いつものように?ニチコンのKWを使います。また電源平滑用のコンデンサは、1000μF→3300μFにします。
耐圧は、10μF以下は50V、10μFを超える部分については16V以上あれば十分です。
5.BFO編
(1)
発振用トランジスタの交換
1010のBFO回路は、トランジスタ1石とコイルを使ったやや簡易的なものです。トランジスタは2SC828(松下)を使っています。
Rグレード(hfe=180〜360)を使っていたので、ここは2SC1815-GR(hfe=
200〜400)を使います。手持ちにローノイズ版があったのでこれを使いましたが、標準品のGRでも全く問題はありません。
なおメーターアンプ用にも、同じ2SC828-Rが使われていたのでこれも交換します。
6.取付位置について
1010は、基板の表面に部品面の略称と番号、取付極性が書いてあるので、交換は楽です。以下に交換する部品名の略号と番号を示します。
トランジスタはTRの他にQで表示してある場合もあるので、両方併記します。
(1) トランジスタ・FET (*1)
TR1, 2, 3(Q1, 2,
3) : 2SA838-B → 2SA1323-C
TR4(Q4) : 2SK49-F→ 2SK192A-GR (*2)
TR5(Q5) : 2SC1359 → 2SC1359-C
(同番号で未使用品に交換)
TR6, 7(Q6,
7) : 2SC828-R → 2SC1815-GR(L) (Lはローノイズの略)
TR8(Q8) : 2SC945 → 2SC1815-Y(L)
TR10, 11(Q10,
11) : 2SC1568 → 2SC1568 (同番号で未使用品に交換)
(2) ダイオード
(*3)
D3 : 0A90 → 1N60
D4, D5, D6, D8, D9 : 0A90 → BAT43
(3)
電解コンデンサ (*4)
※耐圧は10μFまで50V、それを超えるものは16V以上
C16, C34 : 1μF
C22 : 47μF
C24 : 33μF
C25, C36, C146 : 10μF
C31, C113 : 220μF
C37,
C125 : 4.7μF
C42 : 0.1μF
C44 : 0.47μF
C73 : 100μF
C41, C94 : 1μF(オーディオ用)
C93 : 220μF(オーディオ用)
C96 : 0.47μF(オーディオ用)
C97 : 0.1μF(オーディオ用)
C98 : 470μF(オーディオ用)
C99 : 33μF(オーディオ用)
C101 : 1000μF(オーディオ用)
C104 : 1000μF → 3300μF
・無印は標準品
(4) 抵抗
R71 : 39kΩ → 22kΩ(1/4W)
トランジスタとダイオードの位置については、以下の画像に示します。電解コンデンサは、画像では水色の円筒形の部品です(1個だけ半田付け側にあります)。
抵抗は、TR4のすぐ上で横に付いているものを交換します。
(*1)
トランジスタについては、取付穴に「E(エミッタ)、C(コレクタ)、B(ベース)」の表記があります。現在はネットで入手できるトランジスタのデータシートなどを参考に、極性を間違え無く取り付けます。
(*2)
FET(TR4)の場合は「D(ドレイン)、S(ソース)、G(ゲート)」の表記があります。なお2SK49と2SK192Aではドレインとゲートの脚位置が逆なので、192Aを取付ける時は元の49とは逆向きになります。
(*3)ダイオードについては、取付穴に○印の付いている方が「カソード」になります。
(*4)
電解コンデンサでは○印の付いている方が「−(マイナス)」となります。
7.結果
FM/MW/SWとも、感度はワンランク上になります。ノイズの少ない、高音質の放送が楽しめます。BFOも普通に効いており、7MHz帯・14MHz帯のアマチュア無線(SSB/CW)がちゃんと聴けます。
ただ感度は明らかに上がっていますが、Sメーターの上がり具合はマイルドです。トラッキング調整を行っても私の受信環境では、SWでは10段階の9くらいです。ロッドアンテナだけでの結果なので、外部アンテナを接続すれば10までいくかもしれません。MWはローカル局でAM
SENSがDXなら、10まで振り切れます。FMは、市内のコミュニティーFM局でも10までいきます。
ただFM部のトランジスタは、Cグレードは受信条件によっては感度が上がり過ぎるかもしれません。その場合は2SA838/1323ならBグレード(hfe=
70〜140)を使うのも良いかと思います。
部品交換後の基板画像を以下に示します。最後までうまくいったのは、幸運でした。