National RF-1010 : COUGAR 101

 RF-1010(COUGAR 101, 以下"101"と略)は、1975年に発売されたFM/MW/SW1〜SW6の8バンド・ラジオです。101の主な仕様は、以下の通りです。

1.型式:National RF-1010 (愛称: "クーガ101")
2.大きさ:横271・高さ169・奥行87(単位:mm)、重量:1.8kg
3.電源:単2電池×4、ACアダプタ(6V)
4.受信周波数:FM=76〜90MHz、MW=525〜1605kHz、SW1=3.9〜5.1MHz、SW2=5.95〜7.3MHz、SW3=
8.0〜10.0MHz、SW4= 10.0〜12.0MHz、SW5=12.5〜15.45MHz、SW6=17.5〜30.0MHz
5.受信回路:スーパーヘテロダイン(FM:10.7MHz/MW・SW:455kHz)
6.半導体: 1IC・1FET・10トランジスター
7.ダイヤル:フィルムダイヤル式
8.アンテナ:FM/SW=内蔵ロッドアンテナ:MW=内蔵フェライトバーアンテナ
9.主な機能:100等分サブダイヤルスケール、FM AFC、MW/SW感度切替(DX/LOCAL)、BFO、2ウェイメーター(TUNING/BATT)、ダイヤルライト、音質調整(SOFT-MUSIC-NEWS連続可変)
10.外部端子:イヤホン/REC OUT/外部アンテナ/DC 6V(5.5mm径標準ジャック・センターマイナス型)
11.当時の定価:21,000円

 クーガ2200(RF-2200、以下"2200")とほぼ同時期に発売されたBCLラジオです。短波が6バンド、計8バンドなのも2200と同じで、デザインやカラーリング(特に後期型)も2200と似ています。ただし101は短波帯に「バンドスプレッド方式」を採用しており、放送バンドを中心に受信領域をピックアップしているのが2200との違いです。
 なお画面は前期型デザインの101です。前期型と後期型は性能・機能の違いは無く、若干の部品交換があった模様。デザイン上ではスピーカーネットのデザインが異なります。個人的には2200に似たスピーカーネットの後期型より、前期型デザインの方が101の独自性が出ていて好きです。

 2200と比較すると、ずいぶんシンプルなラジオに仕上がっています。デザイン上は、縦に動くSメーターと、100等分のサブスケール付ダイヤルがポイント。
 バンド切り替えスイッチは2200と同じ構成ですが、つまみやスイッチの数は2200の半分以下。ダブルスーパーでもありませんし、ちょっと見た感じは「BCL初心者向けのお手軽ラジオ」といった風情です。
 しかし高級機のRF-1188にしか無い100等分サブスケールに、短波はダイヤルで50〜100kHz直読可能な事(SW1〜SW5)。そしてBFOや大型メーターを搭載するなど本格BCLラジオとしての機能を持ち、それまでのクーガ・シリーズを上回る高感度・高選択度設計にもなっています。また音質は確実に2200を超えており、101が「隠れた名機」と言われる所以です。
 一方、この頃のクーガ・シリーズに搭載されていたジャイロアンテナはありません。しかし下の画像を見ても分かるように内部には非常に長いバーアンテナ(20cm近い)が入っており、おかげで中波の感度はとても高いものになっています。

図1 RF-1010の内部


1.内部回路の構成

 図1を見ていると、内部回路の構成は何となくRP-1600Fに似ている所があります。ただ多バンドのラジオですから、コイルやトリマの数は比較になりません。ただ大きさはRP-1600Fより横が6cm長いだけで、高さと奥行きはほとんど変わらず。機能に比較するとコンパクトに出来ています。RF-2200と同時期の発売ですが、2200というよりCOUGAR 118/118D(RF-1180/1188)に近い回路構成です。
 FMとAM(MW/SW)はフロントエンド部が独立しており、この点は贅沢な設計。FMの高周波部分にFETは使っていませんが、セラミックフィルタを2個使用。AMにはFET(2SK49)を使っており、IFTを3段使った高感度・高選択度設計になっています。
 また中間周波増幅(IF)部・AM局発/MIXERには、2200と同じIC(RVCUPC1018C)を採用しています。

 バリコンは、一般的なラジオ用のポリバリコンを使用しています。ただバリコン上部から出る配線は、2200のバリコンからのごとく針金状の太いものを使っています。
 図1の基板は縦に三等分すると、左が高周波部・中央が中間周波部&検波部、右が低周波部と大体分かれています。バンド切替スイッチは、2200やRF-1180/1188に使われているものの小型版です。
 高周波部にはトリマーの姿が目立ちますが、これは特にSWの調整がトリマーを中心に行う事も大きいように思います。101のSWバンドの場合、発振コイル(OSC)はSW6用にしか無く、SW1〜SW5まではSW6のOSCを使っています。そしてSW2〜SW5の調整はトリマーで行いますので、調整用のトリマーが多くなることになります。
 BFOは、トランジスタ1石(2SC828)とコイルを使った、当時のBCLラジオとしては一般的なものです。

 低周波出力は、トランジスタ2段(2SC945&2SB173)を使い、パワーアンプ段に2SC1568を2個使っています。このため、パワーアンプにIC(HA1329)を使っている2200と比べれば、特にFMの音質は良いと思われます。2200のICはここでも触れた通り、アンプの周波数特性が今一つなので。
 なお2SC1568は、東芝のTRY-X 2000(RP-2000F)のパワーアンプ段にも使われています。出力1,2Wクラスの音響機器には、結構使われていた可能性があります。
 スピーカーはインピーダンス16Ωと高め。BCLラジオの中ではCF-5950の次に高いですね。これで2200と同じ2.2Wの実用最大出力ですから、8Ωスピーカーを使ったら4W・・・ラジオ用スピーカーじゃ壊れるか(笑)。10cmのフルレンジで、聴き疲れの無い良い音を出します。

2.操作系

 操作つまみ・スイッチは、本体前面へ集中配置しています。左サイドは2200と同じくイヤホンとREC OUT端子があり、またDC 6VのACアダプタ接続用のコネクタがあります。昔の5.5mm径・センターマイナス型なので、SONYのAC-D4Mなどが使えます。背面は外部アンテナとアース端子のみ。
 スイッチ類の構成は、中央にトグルスイッチ3個(POWER・AFC/AM SENS・BFO)、バンド切替スイッチ2個(FM/MW/SW、SW1〜6)、ダイヤルライトスイッチが1個。つまみ系は、選局ダイヤルと音質・音量の調整つまみがあるだけです。

 選局メカニズムは糸かけ式で、フィルムダイヤルの動作にギアを使っています。糸かけ式にしてはバックラッシュもほとんど感じず、優れたダイヤル・メカです。スピナーがダイヤルに付いており、これを使うとダイヤルの早回しが出来ます。
 100等分サブスケールは、指針付近以外も一周目盛りが見えるようになっており、デザイン上のポイントになっています。2200の10kHzスプレッドダイヤルと比較すると、文字が大きく見やすい点は長所です。大まかな周波数とサブダイヤルのスケール番号をメモしておけば、目的局へのチューニングは簡単でしょう。なおサブスケールは「0」の所でちょうどダイヤルスケールの「0」と一致するようになっており、選局ダイヤルを4回転する事で、ちょうどダイヤルスケールの「100」に合うようになっています。
 短波帯は放送局のメーターバンド部を拡大しており、受信できない周波数が存在します。ただし101の場合、受信できない周波数領域が非常に少なく、オフバンド(メーターバンドの外)で放送している放送局も、ほとんどが受信可能です。
 目盛りがきちんと調整されていれば、HCJB(15525kHz)やモンゴルの声(12085kHz)の日本語放送は、表示周波数範囲外でも受信可能です。受信できない日本語放送は、秋・冬の朝鮮の声(7580kHz)と、2011年秋・冬のラジオ・タイランド(7465kHz)くらいです。

 AMの感度切替は2200やICF-5900/CF-5950と同じく「AM SENS」となっているので、MWでもSWでも感度切替が出来ます。
 音質は、左端が「SOFT」・中央が「MUSIC」・右端が「NEWS」という、一風変わった設定です。RF-848(WorldBoy GXO)と同じ設定で右に回しきるとNEWSとなり、RF-868のニュース・ポジションと同等の音質効果が期待できます。
 最後にダイヤルライトは1個で、メーターとフィルムダイヤルのみ照らします。サブスケールの照明はありません。明るさは十分で、暗い場所でもはっきり目盛りが読み取れます。

3.感度・音質

 FM/SW/MWともに、予想以上の高感度と高選択度です。シングルスーパーのBCLラジオでは、トップクラスではないでしょうか。
 選択度という点でも、例えば午前のラジオ日経(9595kHz)とラジオ韓国(9575kHz)が、混信無くしっかり分離できています。MWでも文化放送(1134kHz)とKBS京都(1143kHz)が、ほとんど混信無く分離出来ます。18kHz離れれば全く問題はありません。

 音質は、低周波増幅に低ノイズのオーディオ用トランジスタを使っている事もあり、ノイズが無く低音・高音のバランスが取れた、良質の音です。松下のラジオらしい、若干柔らかめで聴き疲れのしない音というのは、RF-868と同様です。

4.まとめ

 2200と同時期に発売された事もあり、周波数直読機能も無いので地味なラジオですが、BCLラジオとしての「戦闘力」は相当なものです。
 101とRF-1188(COUGAR 118D)を最後として、BCLラジオはダブルスーパー&周波数直読の時代に入っていきます。松下のシングルスーパー・BCLラジオの最後期の一台として、高性能を手堅くまとめた一品と言えるでしょう。
 ライバル機は、SONYだとICF-5800(Skysensor 5800)、TOSHIBAだとRP-1700F(TRY-X 1700)あたりでしょうか。ただ感度・選択度では101が一番だと思います。あ、保守のしやすさは101が圧倒的に良いです(笑)。

 しかし101のようなシンプルなラジオでも、スピーカー出力の高さ&音質の良さは、流石に「クーガ」ですね。


RF-1010の内部と調整について

RF-1010改良の記録

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