RF-2200の音質改良について

 あけましておめでとうございます。2010年も宜しくお願いします。

 いずれRF-2200(クーガ2200・以下「2200」)については稿を改めて書こうと思いますが、今回はお正月特別企画で「音質改良」を行ってみました。

※なお本体の分解を伴い、ある程度のハンダ付けの技術を必要とします。実際に行う場合は、くれぐれも自己責任でお願いいたします。

1.きっかけ

 以前このHPを開設する前にblogを行っていましたが、その時2200を入手された方からコメントを頂き、この方の奥様が「良い音だけど、何かラーメン屋で聞くラジオの音みたい」とおっしゃられたそうで・・・(笑) これがきっかけです。
 この奥様のおっしゃられた事は、2200のアンプ部回路やICの仕様などを見れば、感想として十分あり得る事なのですね。RF/IF部の手間のかけ方に比べれば、AF(低周波)部は他のクーガ・シリーズに比べて力を入れた作りではありませんし、電源部も普通で簡易な回路。私も漠然とした感想として「音質は今一つなのでは?」というのを持っていたので。それを明確な形で目の前に出されたという感じです。
 ですからblog時代にコメントを頂いた2200オーナーの方と奥様には、この場を借りて深く感謝いたします。

2.音質向上を考える

 2200の音質向上については色々方法はあるでしょうが、今回は高周波(RF)や中間周波増幅(IF)には手をつけず、純粋にアンプ部と電源部以降に絞っていく事にしました。考えた方法は、以下の3つです。

(1) スピーカー自体の交換
 音質向上には、スピーカーをより良いものに交換してしまうのが一番簡単です。2200のスピーカーは10cmフルレンジ・インピーダンス8Ωですので市場にも沢山あります、が・・・
 一番の問題はスピーカー後部の金具形状。四角形のタイプでないとまず設置できませんが、市場のほとんど100%は後部の形状が円形。同等品を探すのは非常に困難です。よってスピーカー交換は諦めました。

(2) パワーアンプICをピン互換のものに交換
 2200のアンプ部は、日立製の「HA1329」というIC(他社製の互換ICもあるか?)が使われています。電源6V・最大出力2.5W・DIP12ピンのパワーアンプICです。

 このICの特徴は「出力2W以下の、中波・短波ラジオのアンプIC」として、良好な特性を持っている事です。データシートを見ると、周波数特性として良好なのは200〜7,000Hzといった所で、特に10,000Hzを少し切るあたりからの高音域特性は、あまり良くありません。2200でのFM聴取時、音質が今一つに感じるのはこの特性が大きいと思います。
 なお短波・中波向けには十分な特性であり、見方を変えれば、2200はアンプ部も短波・中波聴取に適した設計をしたとも言えます。
 またこのICは、出力1Wを超えて上げていくと、歪特性などが急に悪くなっていくという特徴もあります。オーディオ系アンプには向かない内容で、ラジオやカセットテープレコーダー、ラジカセなど小出力機器向けのICといえるでしょう。

 このICを、ピン互換でもっと高域特性の良いICに変更できれば音質向上が期待できるのですが・・・残念ながらそういったICは、現在見つかりませんでした。

(3) アンプ部・電源部の電解コンデンサを交換
 最後に、オーディオ・ファンの間でしばしば行われている、電解コンデンサの交換はどうか。英語版のサービスマニュアルでHA1329周りの回路を見ると、以下のようになっています。
 ※なおこれは北米向け2200の回路図(一部)ですので、部品の番号や回路構成は、日本向けの2200と若干異なります。

 ここでは、C182の2200μFは電源平滑用、C208の470μFはレギュレータ回路用です。IC(HA1329)の6番ピンにはレギュレータを通さず、平滑直後の+6Vがそのまま入力されています。
 この他にICと直結等などしていて動作(音質)に影響がありそうな電解コンデンサは、C158(1μF)・C167(47μF)・C179(100μF)・C180(100μF)・C181(10μF)の5本。2200のフロントパネルを開けて見ると、何とか大きく分解せずに交換できそうです。
 という訳で、今回は電解コンデンサ(計7本)の交換を行うことにしました。

3.電解コンデンサの選択

 使用する電解コンデンサですが、標準品を使うかオーディオ用を使うか、選択が難しい所です。2010年1月の時点で、私のお勧めは以下の製品です。

(1) 標準品・・・日本ケミコン・SMG
 一見何の変哲も無い標準品。しかしオーディオ機器の修理に使ってもほとんどハズレが無く、低周波・高周波・電源等いずれの回路に使っても、安定した動作とクセの無い特性が期待できるのが特徴です。30年以上前のアンプ修理で色々な電解コンデンサを試したら、一番音質が優れていたのが実はSMGだった、という話があるくらいです。

(2) オーディオ用・・・ニチコン・KW
 同社にはオーディオ用標準品のFWというシリーズがありますが、サイズはそのままに高性能・高音質化を図った製品です。
 KWの特徴は、ニチコン自体も言っているように「低域から高域までの、バランスの良い音質」にあります。特定の性能などを闇雲に上げるのではなく、基本性能や特性を無理せずバランス良く上げる事で、結果として高品質のオーディオ用コンデンサになっています。
 このKWは対象の機器種類や製造年代はあまり関係なく、どのアンプ部や電源部に使っても音質アップが期待でき、ハズレは極めて少ないと思います。ただしあくまでオーディオ用(低周波系)として造られていますので、ラジオの高周波部などにはSMGの方が向いているでしょう。

 どちらかの種類で全部固めても問題ないですが、今回は平滑用の2200μFのみをSMG、残り6本をKWにしました。耐圧は10V以上あれば問題ありません。

4.平滑コンデンサの増量とパスコンの追加

 主に電源リップルの軽減対策として、平滑コンデンサの容量を増量するという方法があります。オーディオ・マニアの中には通常付いていたコンデンサの数倍という大容量を付けたりしている例もありますが、リップルは減っても電源ON時の突入電流で機器を壊す危険性があります。闇雲に増量は行うべきではありません。
 今回はリップル減の他に、増量した結果としての低音部増強(これは意外と感じます)を狙い、2200μFを1段だけ上げた3300μFにしてみました。
 ここまでなら突入電流もあまり増えず、150時間以上の動作も問題は起きていません。ただ万一何かあれば、すぐ2200μFに戻します。

 また高周波成分の平滑を目的に、平滑コンデンサと並列に0.1μFのフィルム・コンデンサ(パスコン)を追加しています(画像)。

5.交換と注意点

 交換作業自体は、フロントパネルまで開けて1個ずつ旧コンデンサのハンダを吸い取って外し、新しいコンデンサをハンダ付けするだけです。極性だけは絶対に間違わずにハンダ付けする必要があります。
 交換の終わった基板とコンデンサの位置・容量は以下の画像に示します。2200μFの所には、今回は3300μFが入っています。


 注意点は、2200の製造バージョンによって交換の作業(難易度)が違ってくる事です。
 2200には製造時期によってバージョンがあり、大まかに「初期型(無印)」「Aタイプ」「Bタイプ」という3つの分け方をされている場合が多いです。なお上記の基板は「Aタイプ」のもので、MWの周波数目盛り、COUGARの銘板、VOLUME/TONEの目盛りの付け方などに違いがあります。
 問題は、上の画像で「47μF・10μF・1μF」に囲まれた、2本のコイルです。

 Aタイプ・Bタイプの場合は上記画像のように部品実装側にコイルが付いているので、コンデンサの交換は比較的容易です。

 問題は初期型で、このコイルが反対側の基板(ハンダ付け側)に付いており、しかも下画像のようにロウ付けされています。
 そのため初期型では「47μF・10μF・1μF」のコンデンサを交換する前に、このコイルのロウ付けと配線を外してから交換作業を行い、作業後にコイルを元の位置に戻してハンダ付けし直す必要があります。


初期型のコイル。ハンダ付けする側にロウ付けされている

6.試聴

 電源を入れて最初は「少し高域強めか?」という感じがありましたが、時間を経過するごとに低域・高域がほどよいバランスの、非常に聴きやすい音質になってきました。購入当初に感じた高域のもっさり感や、少し籠もったような音の感覚は消えています。ノイズ音もだいぶ減った感じですね。
 またFMも短波・中波でも同じですが、音の明瞭感が明らかに向上していると感じています。短波放送等でのちょっと内容が聞き取りにくかった放送内容が、しっかり聞こえてくる感じです。FMの音楽については、これは言うまでもありません。クラシック音楽を聴くのが楽しみになってきました。

 これだったら「ラーメン屋のラジオの音みたい」とは言われない、と思いますけれども(笑)。


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