TOSHIBA RP-1600F : TRY-X 1600

 RP-1600F(TRY-X 1600, 以下"1600"と略)は、1975年に発売されたFM/MW/SWの3バンド・ラジオです。1600の主な仕様は、以下の通りです。

1.型式:TOSHIBA RP-1600F (愛称: "トライエックス1600")
2.大きさ(概算):横214・高さ160・奥行90(単位:mm)、重量:約1.5kg
3.電源:単2電池×3、AC 100V
4.受信周波数:FM:76〜90MHz、MW:525〜1605kHz、SW:3.8〜12MHz
5.受信回路::スーパーヘテロダイン(FM:10.7MHz/MW:455kHz)
6.ダイヤル:フィルムダイヤル式・糸かけ駆動
7.アンテナ:FM/SW:内蔵ロッドアンテナ:MW:内蔵フェライトバーアンテナ

8.主な機能:AFC、MW感度切替、ラウドネス、ダイヤルライト、音質調整、イヤホン/TIMER端子
9.当時の定価:15,500円

 これもICF-5450と同じく、当時としては一見平均的な3バンド・ラジオです。ただしBCLリスナー向けに、チューニングダイヤルに短波のメーターバンドごとのスプレッド・ダイヤルがついており、1MHzマーカー(CAL)との組み合わせで10〜20kHzを直読できるようになっていました。カタログにも「for BCL」と、BCLリスナー向けである事を謳っています。
 なお一定の周波数を直読できる仕組みを持ったラジオは、ソニーでも松下でもなく東芝が最初です。「SOUND750 GS(RP-775F)」というモデルで、不完全で少し難しい方法でしたが、そこそこの精度で周波数を合わせられました。1600のスプレッド・ダイヤルは、RP-775Fでの方法より簡単に合わせられるように改良されたものです。

  当時はスカイセンサー5900があり、その後クーガ2200と10kHz周波数直読機が出てきた頃です。東芝も後に同社ラジオの集大成「TRY-X 2000」を出すのですが、このあたりのモデルは最低でも定価27,800円(5900)と、それなりの値段でした。1600はBFOや12MHz以上の受信機能を省略する代わりに、1万円台半ばという思い切った低価格で出したモデルです。
 しかも一定の周波数直読ができ、BCLラジオとしてはコンパクトな事もあって、そこそこ台数は売れたのではないかと思います。

 東芝のラジオは真空管時代から音質に定評があるのですが、この1600もやや柔らかめのトーンで聴き疲れしない、良い音です。当時として珍しかったラウドネススイッチを搭載しており、これをONにする事で放送の聴きやすさは、かなりアップします。
 感度も必要十分。SWはソコソコの感度ですが、MWとFMは相当の高感度設計です。またIF部に「FT(function Unit)」というユニット化された回路を搭載し、性能の安定化などに貢献しています。

ダイヤルは糸かけ式を採用していますが、そのためかバックラッシュ(滑り)を感じる事があります。特にSWのスプレッド・ダイヤルでは少しのバックラッシュで2,30kHzもずれてしまう場合があり、ここがギアドライブなら・・・と少し残念な所です。
 またマーカーが水晶発振式ではなくLC発振なので、使っていると正常な発振周波数(1MHz)から少しずつずれてきます。こうなると裏蓋を開けて、標準電波(昔はJJY、今はWWV等)やSSGに合わせてマーカーの再校正をしなくてはいけません。
 そして外部アンテナ端子が無く、録音用のREC OUT端子も無いと拡張性に乏しかったのは、価格を考えれば仕方の無い所だったのでしょう。

RP-1600Fの内部と調整について

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