SONY TFM-9510

 TFM-9510(以下"9510"と略)は、1973年に発売されたFM/AMの2バンド・ラジオです。9510の主な仕様は、以下の通りです。

1.型式:SONY TFM-9510 (愛称: なし)
2.大きさ(概算):横343・高さ226・奥行172(単位:mm)、重量:約3.5kg
3.電源:AC 100V
4.受信周波数:FM:76〜90MHz、AM:525〜1605kHz
5.受信回路::スーパーヘテロダイン(FM:10.7MHz/AM:455kHz)
6.ダイヤル:指針移動式(電源ON時ダイヤル透過照明・チューニング用LEDあり)・糸かけ駆動
7.アンテナ:FM:外部アンテナ : AM:内蔵フェライトバーアンテナ

8.主な機能:AFC、ダイヤルライト、音質調整、イヤホン/MPX OUT端子
9.当時の定価:不明

 ラジオメーカーは、真空管→トランジスタ→ICに素子が変わった後も、AC電源専用・据え置きで使う大型のラジオを販売していました。これらは「ホームラジオ」と呼ばれています。TFM-9510はその一台としてソニーが1973年に発売。9510の前にTFM-9500というホームラジオがあり、9510はそのマイナーチェンジ版として世に出ました。
 TFM'Transisitor FM radio)の型番通りトランジスタ13石が使われており、ICは使われていません。16cmフルレンジスピーカーに高出力のパワートランジスタを2個搭載し、無歪最大出力3.5Wを誇ります(実用最大出力はスピーカーの定格から、2Wと思われます)。パワーに余裕のある、とても聴きやすい音を奏でます。
 ちなみに9510の前後を含めた3モデル(TFM-9500, TFM-9510, ICF-9250)は、ソニーのホームラジオではベストサウンドではないでしょうか。

 デザインは左側にスピーカー、右側に縦型の大型ダイヤルスケールを配し、右上部に選局ダイヤル、その下にバンドスイッチと音量音質調整、右下に電源スイッチという構成。側面や背面にスイッチ類はありません。このデザインは9510の時に固まり、以降横型スケールのICF-9640を除けば全てソニーのホームラジオは、このデザイン構成を踏まえています。

 9510のデザイン上最大の個性は、音量・音質調整が回転式ボリュームではなく、スライド式である事です。スライド式ボリュームのホームラジオは珍しく、ソニーではこのモデルだけだと思います。またAFCスイッチはバンド切替スイッチに統合されており、電源スイッチは懐かしの?シーソー型となっています。結構大きいスイッチですね。
 キャビネットは「なんちゃって木目調」ではなく、合板ですがちゃんと木を使っています。前面はプラスチックですが結構厚く重みのあるもので、スピーカーの高出力にも負けないようになっています。

 ダイヤルは、以下の画像のように電源OFF時は見えませんが、電源ONにするとバックライト(電球2個)が点灯し、周波数表示が緑色に浮き上がるという透過式です。なかなか凝っており、ダイヤル表示の美しさは出色です。

 最後に感度ですが、FMは数十cmのワイヤーアンテナを背面に接続するだけで、かなりの高感度になります。アース線も付ければ、さらに雑音が減ります。
 AMの感度は標準的です。ただ16cmという長大なバーアンテナを積んでいる事もあり、調整すればそれなりの高感度ラジオになります。ただ地元局を高音質で聴くことに重点を置いているので、BCLラジオのような高感度という訳にはいかないでしょう。

 9510は約5年間販売され、オールトランジスタのTFM型番としては最後のホームラジオとなりました。後継機からはホームラジオもIC搭載の時代に入り、製造も日本から台湾に移っていきます。

TFM-9510の内部と調整について


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