SONY CF-1790/1790B : Sound 1790

 CF-1790/1790B(Sound 1790, 以下"1790"と略)は、ソニーから1975年に発売されたFM/MW/SWの3バンド・モノラルラジオカセットレコーダーです。1790の主な仕様は、以下の通りです。

1.型式:SONY CF-1790/1790B (愛称: "Sound 1790")
2.大きさ(概算):横412・高さ265・奥行110(単位:mm)、重量:約4.5kg
3.電源:単1電池×4、AC 100V、DC 6V。
4.受信周波数:FM:76〜90MHz、MW:525〜1605kHz、SW:3.9〜12MHz
5.周波数範囲:ノーマルテープ : 50〜10,000Hz
6.スピーカー:16cmウーファー+5cmツイーター 2ウェイ

6.選局ダイヤル:指針式・フライホイール付
7.アンテナ:FM/SW : ロッドアンテナ、MW : 内蔵フェライトバーアンテナ。

8.主な機能:2メーター搭載(TUNINGメーター&VU/BATTERYメーター)、VOCAL UP機能、キュー&レビュー、ワンタッチレコー^ディング、フルオートストップ、メカニカルポーズ、スリープ機能、低音/高音独立音質調整、LINE IN端子、外部マイク・イヤホン、リモート端子
9.当時の定価:37,800円(CF-1790)、38,800円(CF-1790B)

 1790と1790Bの違いは、ボディの色がシルバーかブラックかという事のみです。上の写真は黒ですので1790B。シルバーの1790より1,000円割高な定価設定がされていました。なお機能や性能の違いはありません。
 当時の一眼レフカメラがボディの色で、同様の「ブラック割高設定」をしていたのを思い出します。

 1790の発売当時、ソニーのモノラルラジカセはCF-1980U(Studio1980U)、CF-1990(Studio1990)等の「大型・高編集機能・高音質」の製品が人気でした。特にStudioシリーズの特徴である「多重ミキシング編集機」は、ソニーの独壇場といった感じでした。

 松下など他社は、多重ミキシング機能などのテープ編集機能で直接ソニーと争う事は避けていました。その代わりCF-1980U/1990より多少安い定価(30,000円〜42,000円くらい)で、「高音質」「独自の便利機能」を搭載する方向に行っています。それらの昨日には、3ウェイスピーカー、多機能ワイヤレスマイク、テープの頭出し機能、TV音声受信機能などがありました。
 もちろんソニーもそれらへの対抗機種を出していくのですが、1790もその中の一台です。この機種は「簡単操作」「基本機能の充実」「高音質」に絞ったのが特徴で、Studio1980Uより価格を下げて、3万円台後半の定価で発売されました。
 なおStudioシリーズのような多重ミキシングやミキシング音量調整機能は付いていませんので、愛称も「Studio1790」ではなく「Sound1790」となりました。

 ターゲットは生録やテープ編集といったハードな使用をするユーザーではなく、「シンプル操作で高音質」を好む中高年層や、ライトなオーディオファン、女性ユーザーではなかったでしょうか。チューナー(ラジオ)部やカセット部の操作と機能、外部端子のセレクトも、余計な物は搭載せず必要な機能だけをバランスよく搭載したラジカセです。
 そして当時のラジカセではあまり見られない、非常にスタイリッシュで落ち着きのある外観。デザイン的には歴代ラジカセの中でもトップクラスだと思います。機能の派手さは無いものの質実剛健、高音質ラジカセとして手堅くまとめたという感じです、一応ね(笑)。

1.外観について

 外観上のデザインはCF-1980Uや1990ではなく、CF-9000(Rhythm Capsule 9000)をベースにしていると思われます。スピーカーグリルの処理やスイッチ・丸いつまみの形状が似ています。
 スピーカーは16cmウーハーと5cmツイーターの2ウェイで、当時の高音質ラジカセでは「お約束」の構成でした。低音も高音も、バランスの良い落ち着いた音です。

 選局用ダイヤルスケールは一般的な横長タイプで、FMの表示が上半分に大きく取られてあり、下半分をMWとSWで分け合う形です。CF-1980U/1990がほぼ3バンド均等な大きさで表示しているのに対し、かなりFM側の表示を大きく取ったデザインです。

 スケール左側には、動作中である事を示す「OPERATION」ランプ(赤色LED)、右側にはチューニングメーターがあります。チューニングメーターは、通常のラジカセだとVUメーターやバッテリー残量メーターと共用ですが、1790ではVU/バッテリーメーターを独立させたため、チューニングメーターは放送局の受信感度のみを表示します。
 なおチューニングメーターは、「OPERATION」ランプの点灯中なら常に放送局の受信感度を表示しています。そのため周波数が分かっていれば、テープ再生中や外部マイクでの録音中でも選局ダイヤルを回し、周波数表示とメーターの振れを頼りに選局する事が出来ます。
 この「2メーター表示」が1790の外観上、最大の特徴といって良いでしょう。

2.操作部について(共通部)

 スイッチやつまみ類は、本体上部に集中して配置されています。上部以外では、右側面に選局ダイヤル、正面にテープカウンターのリセットボタンがあるだけです。


 音質にこだわったモデルらしく、TONE(音質)つまみはBASS(低音)/TREBLE(高音)が独立して搭載されています。

 本体上部左端には、黄色の「LIGHT/BATTERY CHECK」ボタンがあります。押すとダイヤルスケールとメーター2個が照明され、正面左のVUメーターがバッテリー残量メーターになります。
 なおダイヤルスケールは裏側から光が透過して照らされるため、周波数の文字などが浮き上がって見える、凝ったもの。とても美しいものです。

 また1790の特徴的機能として、ファンクションスイッチ(RADIO/LINE IN)の右横にある「VOCAL」スイッチが挙げられます。これは「VOCAL UP機能」と呼ばれるもので、一種のオーディオ・フィルターになっています。スイッチを「UP」にすると、人間の声に近い音声周波数を強調し、その他の音声(ノイズ等)を減衰、あるいはカットする機能です。特に短波(SW)・中波(MW)の受信で、受信状態が悪い場合や遠距離の放送局を受信する時などに、威力を発揮します。
 他にはRF-868/868D(松下)やFR-6600(ビクター)といったラジオに、類似の機能が付いています。

3.操作部について(カセット部)

 カセット操作部のボタン配置は、CF-1980U/1990を始めとした当時のソニー製ラジカセの多くとは異なります。松下や東芝、三洋など他社製ラジカセのボタン配置と合わせた印象です。PAUSE(一時停止)機能付の場合、ソニーと他社製ではこれだけ違っていました(カセット取出し(EJECT)が別な、7ボタン式の場合)。

ソニー製(CF-1700/1900系の大半、CF-1150/1160等): [一時停止] [録音] [早送り] [再生] [停止] [巻戻し] [カセット取出し]
他社標準的配置・一部ソニー製(CF-1790,1500系など): [一時停止] [停止] [早送り] [再生] [巻戻し] [録音] [カセット取出し]

 1790では、カセット取出しボタンは停止ボタンと共通になり、6ボタンになっています。録音は、この頃多く見られる「録音と再生ボタンを同時に押し込む」タイプではなく、録音ボタンだけを押し込みます(ワンタッチ・レコーディング機能)。
 ボタンの操作タッチは、多少硬めながらかなり良好です。安っぽい感じは全く無く、「カチッ」という感じで確実に押し込まれる感じです。なお録音ボタンは誤動作を防ぐために、他のボタンと比べてかなり重めになっています。

 最後に自動停止(オートストップ)ですが、再生・録音・早送り・巻戻しの全ポジションでテープ巻取り終了時に自動停止する、フルオートストップ機構を採用しています。当時は再生・録音だけのオートストップがまだ主流でしたので、奢った機能と言えます。

4.操作部について(チューナー部)

 1790のような音質重視タイプの製品は、通常FM/MWの2バンドになるのですが、1790は短波も含めた3バンドです。
 チューナー部は、同社のCF-1980Uと同等・同性能のものを使っています。ただダイヤルのスケール長は1980Uに比べて横幅が少し長くとってあり、細かい選局がしやすくなっています。
 また選局ダイヤルにフライホイールを内蔵した事で、このためダイヤルのタッチは国内のラジカセ中一、二を争うほど快適なものです。
 右側のチューニングメーターは、かなり強い信号を受信しても7〜8くらいしか振れません。これは故障ではなく仕様です。CF-5950のチューニングメーターについても同様の現象があります。

 まとめると「Studio1980U(CF-1980U)のテープ編集機能を除き、基本機能と高音質のための工夫を施した、大人のスタイリッシュ・ラジカセ」という感じでしょうか。音質の良さは言うまでもありませんし、操作系も必要なスイッチだけでシンプルにまとめているので、直感的で非常に扱いやすい製品です。

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