162-Fの内部について

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 これは162-Fの内部記録と、部品交換の記録として作成しました。
 なお電卓は非常に精密な機器ですので、部品交換には細心の注意が必要です。特に液晶表示の小型電卓は、そのほとんどがチップ部品であり個人レベルでの交換は困難です。
 70年代くらいまでの中型・大型電卓ならあるいは可能かもしれませんが、古い電卓の部品交換等はどうか自己責任でお願いします。

※162-Fの内部

  162-Fは保守性が非常に良く、裏側のネジ4本を外すだけで簡単に上部カバーを外せます。さらにメイン基板は、ネジ1本外すだけで取り出す事が可能です。


画像1:四隅のネジ4本を外して分解。左が底面(メイン基板)・右が上カバー(キーボード基板)


画像2:メイン基板。VFD(蛍光表示管)はNEC製。

 VFD(蛍光表示管)はNEC製で、裏に「LD8127」と型番が印刷されたシールが貼ってありました。
 基板左側が、VFD表示関連のユニット部となっているようで、電解コンデンサ(6個)や1個だけあるトランジスタが見えます。
 なお電解コンデンサはエルナー(ELNA)製、トランジスタは日立の2SC1162が使われていました。
 そして右上にあるシーソー型の電源スイッチは、アルプス電気製でした。


画像3:IC/LSI部拡大図

 IC/LSIは画像3・左上から右下へ、T3184(東芝)・TC4050P(東芝)・HD3556(日立)・HD36611(日立)・HD3527(日立)・TM4352P(東芝)・HN35305(日立)・HD3555(日立)という構成です。
 IC/LSIの製造年月日は、上面に印刷されているコード(5F 13, 5-J等)より、TC4050P=1975年9月・HD3556=1975年11月11日・HD36611=1975年10月11日・HD3527=1975年12月13日・TM4352P=1975年10月・HN35305=1975年6月13日・HD3555=1975年11月13日の製造と考えられます。


像4:キーボード側。

1.電解コンデンサの交換

 電解コンデンサはメイン基板の左半分に、ほぼ固まって6本が並んでいます。
 容量を測ってみると、さすがに容量抜けと思われるものが確認できました。結構電圧のかかっている所でもあり、トラブルを起こして他の回路まで壊してしまうと元も子もないので、思い切って全数交換する事にしました。
 2009年の暮れに、CF-5950(ソニーのBCLラジオカセット)の修理用に購入した電解コンデンサの余りがあったので、これを使いました。これがオーディオ用(ニチコン製・KW)だった訳ですが、もちろん日本ケミコンやニチコン等の標準品で十分です。

 交換はこんな感じに行いました。基板パターンに十分な広さがあったので、交換は楽でした。

・ELNA 1000μF/25V → Nichicon KW 1000μF/35V へ交換
・10μF/16V → KW 10μF/50V へ
・10μF/25V → KW 10μF/50V へ
・33μF/25V → KW 33μF/50V へ
・1μF/63V → KW 1μF/100V へ
・3.3μF/63V → KW 3.3μF/100V へ

 電源平滑用も含め、今回は全てニチコンのKWを使用。1000μFは若干余裕を持たせて耐圧35V、63V品を除く3本は耐圧50V、63V品は耐圧100Vで統一しました。
 最近10μF以下の製品は、耐圧50Vの上が100Vに統一されつつあります。

 通算200時間以上動作させていますが、特に熱くなるような事も無く快調に動作しています。


画像5:交換の終わった電解コンデンサ(黒に金ラインの円筒形・計6本)

2.トランジスタの交換

 162-Fで使用されているトランジスタは1個。アンプ用の2SC1162(日立)です。
 しかし何か斜めに取り付けられているし、脚の曲げ方も何かきれいじゃないし・・・で、これも交換する事にしました。
 ただ現在、2SC1162は入手困難。ならば互換品を・・・と探してきたのが、下図左のトランジスタです。


画像6:交換用2SC1173と、取り外した2SC1162

 交換品は2SC1173(Y)、東芝製のアンプ/高周波回路用トランジスタです。アンプの他にも無線機のファイナル段として使われていた事もある、用途の広い製品です。(追記:CASIO製VFD表示・加算器式電卓のF-1(F-2)の内部には、2SC1173が使われていました)
 現在も生産しているかは不明ですが、パーツショップでも結構容易に手に入ります。ただ値段は2SC1162の二倍ですが・・・
 今まで頑張ってきた2SC1162に「ご苦労でした!」と感謝しつつ、交換。脚はちゃんと、直角に曲げて挿すからね(笑)。


画像7:2SC1173(中央)を取り付けたメイン基板

 2SC1173は2SC1162とベース・エミッタの脚位置が逆なので、取付ける時は画像7のように裏向きにします。これで電解コンデンサもトランジスタも、すっかりリフレッシュされました。
 画像8が最終形。画像2と比較して左中央部の部品が換わっているのがお分かりかと思います。


画像8:交換終了後のメイン基板

 そして現在は、以下の画像のように快適に動作中。VFDの表示も明るく、美しいです。
 あと20年くらいは、快調な動作を続けてほしいものです。


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