CASIO 801-MR : Perfect Eight

 CASIO 801-MR(以下"801-MR"と略)は、1974年に発売されたVFD(蛍光表示管)表示の8桁・パーソナル電卓です。801-MRの主な仕様は、以下の通りです。上位機種の101-MRは加算器式ですし、これも加算器式が使える?と思って手に入れたら、後述のように「実は・・・」というものでした(笑)。

 1.型式:CASIO 801-MR
 2.大きさ:幅116・奥行154・高さ37(単位:mm)、重量:280g(電池除く)
 3.電源:単三×4本、ACアダプタ(AD-4145/DC 4.5V 300mA) 消費電力:0.3W
 4.桁数:置数8桁・加減乗除結果8桁(負数は7桁・最大16桁)・平方根結果7桁
 5.表示素子・状態表示:VFD(蛍光表示管) ・ エラー時"E"(Eは最下桁に表示)

 6.搭載メモリー:"Σ"スイッチをONにする事による、累計メモリー([T]キーで呼び出し)
 7.定数計算:スイッチ切り替え(K)、乗除のみ可能
 8.主な計算機能:四則計算、各種定数計算、合計計算、百分率(%)、平方根(√)、表示数値シフト([→])など
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.標準小売価格(当時): 15,500円

※型番について

 型番の頭にアルファベットの付かない「ナンバー・シリーズ」です。
 801-MRの場合、上の「8」で8桁電卓である事をあらわし、「0」は独立メモリーが無し(MR,MC.M+,M-キーが無い)、「1」はシリーズ最初のモデル、「MR」は「MemoRy(累計メモリー機能がある))」の略ではないかと思われます。
 ここにある801-MRのカタログ画像では「パーフェクト エイト」の愛称が付いています。

※製品の概要

 カシオ・ミニを大きくしたような「カシオ・ミディアム」という感じの製品です。ベースは8桁版のカシオ・ミニでしょう。
 そのカシオ・ミニ系の「ROOT・M (通称:デラックス・ミニ)」とは、CPUが同一(日立・HD3654)で機能も価格もほぼ同じな兄弟モデル。ROOT・Mに「%」「定数計算」「集計計算」が追加されて、価格はROOT・Mより1,000円高でした。
 カシオ・ミニ系と同様に「電池で動作するパーソナル電卓だが、机上の実務計算にもある程度対応した」という守備範囲の広いモデルです。
 値段的にも微妙ながら、ギリギリでパーソナル電卓としての価格になっています。

 持ち運びよりも机に置いての操作をメインに考えたためか、筐体やキーはカシオ・ミニ系より大型化され、持ち運びに不便な反面で操作性が大きく向上しています。ただ下に書いたように表示は大型化しなかったので、筐体の大きさに比較して表示する数字は小さく見えます。
 電源はカシオ・ミニ系と同じ単三・4本の電池かACアダプタ(AD-4145:生産終了)を使います。なお現在AD-4145代用のACアダプタを求めるとすれば、ソニーのAC-D3Mが一番入手しやすいでしょう。
 愛称の「パーフェクト エイト」は、これまでのカシオ・ミニ系にあった全機能を一台にまとめ、定数計算や集計計算にも対応した「完璧な機能の8桁機」という意味で付けたのではないか、と思います。

※二つの[=]キーと、実務電卓を意識したキー・スイッチ配置

 801-MRの外観上の大きな特徴は、何と言っても本体右側にある二つの[=]キー。上方の「Σ」スイッチをONにする事で、加算器方式のような集計計算が出来ます。グレーの[=]が[+=]、赤が[-=」のように動作しているように見えますが、実際はグレーの[=]は[M+]、赤の[=]は[M-]としての動作と同じです。[T]キーが総合計を表示するキーですが、これは現在の電卓の[MR]キーに当たります。このメモリー値は[AC]キーを押すとクリアされます。
 つまり加算器式のような[=]キーですが、実際は加算器式ではなく内部メモリーへの加算・減算キー。その証拠にグレーでも赤でも[=]キーを押した時に、それまでの累計は表示されません。直前に入力した数字か計算結果が表示されます。累計は[T]キーを押さないと表示されない「なんちゃって加算器式」なモデルです。
 なお「Σ」スイッチがOFFだと、グレー・赤の[=]キーは、どちらも通常の[=]キーとなります。また[T]キーは無効となり、常にゼロ表示。メモリの無い8桁電卓と一緒の機能になります。

 また左側のキー配置や上方のスイッチ類は、当時のデスクトップ型・実務電卓の機能や配置を取り入れています。左下に[AC]ではなく置数訂正用の[C]キーを置いたり、定数計算用の切替スイッチなどがそれに当たります。[0]や[+]キーもカシオ・ミニ系とは異なり、横長に取っていますね。

※表示について

 蛍光管表示は8桁ですが、大きさに比較して表示も大きいという感じはありません。大きさはカシオ・ミニ系と変わらないような気すらします。ただここを大きくすると、価格が数千円はハネ上がったかもしれません。なお表示は明るく、読み取りのし易さは問題ありません。
 通常は8桁で、負数は「−」表示に1桁使うため7桁まで。乗算の結果は最大16桁、平方根は7桁、その他は9桁(負数は8桁)まで求められます。常に表示されるのは8桁までで、それ以下の桁表示にはカシオ・ミニ系と同様に[→]キー(右向きの三角マーク)を押します。
 ゼロの表示は、この頃のカシオ・小型電卓の標準というか、上の画像のように普通の半分という高さで表示されます。

※キータッチについて

 キーの感触は若干浅めですが、フワフワしない押しやすいキータッチです。キーの大きさもキー間隔も十分に取ってあるので、押し間違いや押しにくいといった事は少ないでしょう。左手での操作も十分やりやすいです。

※演算機能について

 四則以外の計算機能は√・%・定数計算(K)を搭載しています。また「Σ」スイッチをONにすると集計計算モードとなり、計算後に[T]キーを押す事で総合計が求められます。
 なおサインチェンジ(+/-)やマークアップ(MU)といった機能や、四捨五入や切捨て/切上げ・小数点以下桁数指定といった丸め計算系の機能はありません。サインチェンジくらいは欲しかったような気もしますが、当時はこの機能を搭載したパーソナル電卓は非常に少なかったです。そしてその中でも最も搭載に消極的だったのが、他ならぬカシオ。逆に積極的に搭載していたのがキヤノンで、シャープはモデルによって付けたり付けなかったり、という印象があります。

※まとめ

 このモデルはパーソナル電卓でありながら、同じパーソナル系のカシオ・ミニと本格デスクトップ電卓のちょうど中間に位置した製品です。現在各社が「本格実務電卓」「経理仕様電卓」と称して販売している電卓とサイズはほぼ同じで、その意味では現在の実務電卓のさきがけになったようなモデルです。
 「カシオ・ミニもいいけど、もう少し操作しやすい大きさの電卓が欲しい」という、比較的計算の多い人向けの製品だったかもしれません。

 この「机上で本格計算も出来て、電池で駆動できる」パーソナル実務電卓は、後に「ジャスト・サイズ」と呼ばれるようになり、803-MR/103-MR/121-MRからJ-1/J-2/J-3/J-10/J-20のJシリーズ、表示が液晶になったJLシリーズなどを経て、現在のDS/JSシリーズまで連綿と続いていく事になります。

801-MRの内部について

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